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同窓会の最近の活動

応用化学科同窓会主催講演会

○2016年 講演者 近藤誠一氏

1946年神奈川県生まれ。1971年東京⼤学教養学部教養学科イ ギリス科卒業,同⼤学院法学政治学研究科を中退し,1972年外 務省⼊省。1973〜1975年英国オックスフォード⼤学留学。国際報 道課⻑,在フィリピン⼤使館参事官,在⽶国⼤使館参事官,同公 使,経済局参事官,同審議官,OECD事務次⻑,広報⽂化交流 部⻑,国際貿易・経済担当⼤使等を歴任。2006〜2008年ユネス コ⽇本政府代表部特命全権⼤使,2008年駐デンマーク特命全権大使。2010年7⽉30⽇より2013年7⽉まで⽂化庁⻑官。退 官後東⼤特任教授、東京芸⼤客員教授、京都市芸術⽂化協会理事 ⻑、東京都交響楽団理事⻑、⽇本舞踊協会会長等を務める。
(講演内容)
「富⼠⼭が世界遺産に登録、なぜ⽂化遺産で登録されたのか︖」
 講演はまず,司会者である岡島広幸氏(同窓会副会長,昭和51年卒)による近藤誠一氏の紹介から始まった後、近藤氏は,すぐに世界遺産の話をせずに,学生向けに(だと思われる?),現在の日本を取り巻く世界情勢の話から入った。1985年9月25日のプラザ合意の話や,今なぜトランプ候補(現アメリカ大統領)が出てきたのかなどについても我々は考えるべきであるという話をされた。恐らく,世界遺産登録決定に関しても,日本が独自に決めるのではなく,世界の他国の人々の意見や意思,また利害が入り組んだ上で決まる事を暗に示していたと推察される。それに続いて近藤氏は,世界遺産の話に入っていき,1.世界遺産とは,2.登録の手順,3.富士山が文化遺産である事の意義、4.当初,三保の松原は世界遺産から除外されていた,などの話に移っていった。個人的には,ここまで話を聞いて初めて,ユネスコが扱う世界遺産には,文化遺産,自然遺産,複合遺産がある事を認識できた。富士山は,世界文化遺産である。その他文化遺産には,京都や奈良,最近では岩手県の平泉(中尊寺,手越寺など)があり、これらに対して世界自然遺産には,屋久島,白神山地,知床,最近では,小笠原諸島がある。近藤氏の話では,文化遺産と自然遺産では登録認定の仕方・見方が異なる。文化遺産とは,人(日本人)が創った(作った)とか,日本人の感性が入っているなどが重要であるが,自然遺産とは人の(日本人の)手や感性が入っていないのだそうである。 それではなぜ,富士山が文化遺産であるのか(自然遺産ではない)。近藤氏は,その理由を,昔から,人(日本人)は,自然が形成した富士山をもとに,人(日本人)の優れた感性,自然観や美意識を足す(融合させる)事により,富士山を芸術的な物として表現して来た。この昔からの事実が,富士山が世界文化遺産として登録された大きな理由の一つであると述べられた。次に、近藤氏は,富士山の一部のような物(場所)という感じで世界文化遺産登録された「三保の松原」についても話をされた。近藤氏によれば,三保の松原は当初,世界文化遺産登録される事は困難であるとされていたらしい。それが、逆転登録となった経緯について詳しく述べられた。これは,美的な観点も当然あるが,政治的なものがかなり含まれていた。まず第一の理由は,三保の松原は,安藤広重(歌川広重)の絵画にも描かれているように,昔から富士山と一体になって芸術として描かれている点であるが,さらにその事実を元に,三保の松原が世界文化遺産として登録認定されるためには,どうしたらよいか,どうしたら他の人(登録審査員)が賛成してくれるのかなどについて,4名の専門家とともに相談する事から始めた。 その結果,1.登録のための説明文は1ページに分かりやすく要約するべきである,2.登録審査員の中で気むずかしい感じの人を説得する事が重要であるとした。それで,実際に当該の人(ヨーロッパにある小国の人)を説得したのである。その人と会って話して探った事は,絶対反対なのか,まあ反対なのか,賛成もしないが反対もしない,のかであった。最初,こちらがソフトな口調で話しを切り出したところ,食事に行こうと誘われたため,この審査員の心持ちは,賛成でも反対でもないとわかったという事である。次に近藤氏は,二番目に難しそうな審査員(ヨーロッパのD国)の説得に行ったところ,三保の松原の登録に賛成してくれたようだと感じた,と述べられた。この段階で,登録が上手く行きそうだと感じたが,最後まで気を抜けなかったと話をされた(その後も,このようなロビー活動話があるのであるが,ここでは割愛する)。それで結局,三保の松原も富士山と一体となって登録されたのである。ここで私は,この話を聞いて,何かをやり遂げるためには,先の状況を読んで計画を立てて実際に行動する事がなにより重要で思いました。店に品物を並べて客を待つのではなく,率先して売り込む事が重要であると強く認識しました。また,いろいろな逸話や世界遺産の話を聞く事ができ,たいへん有意義な講演会であったと思いました。日本の太平洋側から三保の松原を含めて見る富士山の情景が,世界的に認められたという事です。

講演中の近藤誠一氏

講演中の会場の風景



○2015年 講演者 内海順夫氏

元サーモフィッシャーサイエンテイフィック デイレクター
中央大学大学院理工学研究科工業化学専攻修士課程(1978年)修了。
ラサ工業の工場勤務のあと、安藤淳平教授の推薦で1980年からアメリカ国際肥料開発センター勤務後、さらにアメリカ政府研究機関TVAに客員エンジニアとして在籍した。1998年から2015年11月までフィンランド・スイス・アメリカ系の外資企業に勤務。その間、海外勤務2年4ヶ月。18カ国に70回以上の海外出張の経験がある。最近の20年は、ライフサイエンス・バイオテクノロジー関連企業に勤め、DNA合成製造やサプライチェーンなどのオペレーションを担当した。
(講演内容)
「外資系企業に勤務して思うことー国内企業との違い」
 3回のヘッドハンティングを経験、そのたびにステップアップされていった。最初は、フィンランドの食品バイオの企業に就職、キシリトールの食品添加物としての国内申請作業を担当した。2回目のヘッドハンティングでは、スイスの保険会社でリスクエンジニアリング部門を担当、リスク分析のアドバイス、改善案を英文で作成されたがこの経験が後に非常に役立ったと述べられた。本来エンジニアであることから現場に戻りたいという気持ちが強くなっていかれた。3度目のヘッドハンテイングでアメリカのバイオテクノロジー関連の会社に移り、横浜にラボを立ち上げられた。DNAの合成、発注された配列の塩基合成、ペプチドからの抗体作成、ライフサイエンス試薬等のオペレーションシステム(倉庫・物流)を担当された。
 非常に長く外国企業に在職された経験から、日本政府の外国企業の評価、外資系企業の給与とボーナス、会社組織と入社から退社までの多くのケース(採用、入社、評価、待遇、転職、退職まで)、現地法人と本社の関係、目標設定、売り上げ、生産量や従業員の業績の評価方法などを具体的な例を挙げて話された。そして、最後に、現役の学生の皆さんへと題して、グローバルな企業に就職するときの心構えを詳細に述べられた。外資企業の話を聞く機会は少なく、しかし、外資企業への就職する機会が増えている現状から、現役の学生諸君には、非常に参考になった講演であった。

講演中の内海順夫氏



○2014年 講演者 田島秀二氏

プレシジョン・サイエンス・システム代表取締役社長
中央大理工学部工業化学科(1976年)卒業
1995年に「マグトレーション」技術を中核としたバイオ分析装置の開発会社を設立。2001年にジャスダック市場に上場した。 臨床診断分野での成長を目指し、核酸抽出 から増幅、検出までを全自動装置の開発を目指している。顧客は.ロッシュ、キアゲン.エリテック、三菱ケミカルなど世界的な企業である。バイオベンチャー大賞受賞。
(講演内容)
「バイオベンチャーの起業からジャスダック市場への上場まで」
中央大学理工学部工業化学科で過ごした学生時代、卒業後の科学機器メーカーへの就職、この企業での仕事内容から、プレシジョン・システム・サイエンス(PSS)株式会社設立までの経緯のお話があった。磁性体を利用するDNAの自動抽出装置を開発、この装置が世界標準となり、主要商品開発になるまでの苦労話をされた。開発装置の原理解説、世界一流生化学企業(ロッシュ)との連携とOEM製品の生産供給までの経緯、海外市場への進出、東京証券取引所のジャスダック市場への上場までとPSSの現在の経営状況等と今後の会社経営について詳細な話があった。さらに、直近に開発された三つ製品の紹介があった。また、理工学部学生の採用についても言及された。
(感想)
新規開発は種々の技術が集結して初めて実を結ぶもので、一社の力は小さいが培った技術を世界的なレベルまで進め、実用化に成功させた情熱をひしひしと感じた。

講演中の田島秀二氏



○2013年 講演者  赤尾祐司氏

シチズン時計(株)化学応用課長
中央大学工業化学科(1987年)卒業 次世代対応型の新たらしい潤滑油を開発、止まらない時計を提案。
時計業界の標準油として、世界で使用されている。
環境大臣賞、モノつくり大賞受賞。
(講演内容)
「化学の力で未来を築く」
 研究職について、十年ごとに次のような目標を持って仕事をしてきた。
 ①夢を実現するための準備期間:先端技術開発に見合う技術力習得の時代 ②時計業界の常識を覆す:時計産業は成熟産業である、化学の力で世界中の人々に役立ちたいと考える。そして、劣化しない潤滑油開発への挑戦 ③社会全体と会社との長は示現するための化学技術基盤をつくる。
 次世代対応新型潤滑剤AOオイルの開発、AOは赤尾を意味し、自分のお名前が世界中回っているのは誇りである。AOオイルの開発の苦労を述べた。そして、失敗を糧に、成功に結びつけるかを、強い意志と明るい目標をいつも抱き、挑戦していくという言葉で講演を終えた。

講演中の赤尾祐司氏



○2012年 講演者 杉本八郎氏

同志社大学大学院脳科学研究科教授チェアプロフェッサー教授
中央大学理工学部工業化学科(1969年卒業) 薬学博士 中央大学名誉博士
エーザイ(株)理事・創薬第一研究所所長、京都大学大学院薬学研究科創薬神経学講座教授、同研究科最先端創薬研究センター客員を経て現職
アルツハイマーの特効薬「アリセプト」を開発その業績で英国ガリアン特別賞、恩賜発明賞等多数受賞
(講演内容)
「アルツハイマー病の治療と予防について」
 アルツハイマー病は、その原因物質が脳中のタンパク質隔壁を通過して蓄積し、さらに、発症する物質に変化するために発症すると説明された。 開発されたアルツハイマー治療薬アリセプトは、進行を遅め悪化防ぐ働きをする。  そして、アルツハイマーを克服したい一念で新薬を開発し、現在も研究を進めていて、三つの新薬をつくることを目指している。①血圧を下げる薬の開発、②アルツハイマー病治療薬=世界初のアリセプトの創薬 ③根本治療薬 新薬の開発には膨大な費用と時間をかけ、成功率は0.02%言われる。先生は①、②の新薬は開発されていて「創薬の達人}と言われている。そのほか、剣道7段、俳号を持つ俳人であることも述べられた。
(感想)
 ハワイからの来場者の方は、アルツハイマー病の親の世話で苦労された方で、多くの質問をされたが、先生は誠意を持って答えられていたのが印象的でした。

講演中の杉本八郎氏



○2011年 講演者 谷津龍太郎氏

環境省顧問、中間貯蔵・環境安全事業株式会社代表取締役
(環境省大臣官房長 環境省事務次官を経て現職)
東北大学大学院工学研究科博士課程修了 工学博士
専門分野は、環境政策。
1989~1991年JICAインドネシア人口環境省環境政策アドバイザーのほか、国連大学高等研究所客員研究員。地球サミット(1992)、地球温暖化防止京都会議(UNFCCC COP3/1997)、G8環境大臣会合(2008)等の国際交渉に従事。
(講演内容)
「東日本大震災と環境政策」
 東日本大震災前の環境省から規模が大きく様変わり新たなミッションに挑戦している、職員1200名から2000名に増強体制へ予算は二千億から一兆三千七百億円に。
 現行の法律体系化では、原発事故で環境中に大量の放射性物質が拡散し、大量の汚染 廃棄物や土壌等の発生が予想されなかった。そのため①震災・津波時の大量災害廃棄物処理、②原子力災害時の土壌等の除去 ③原子力行政の見直し、④福島県民への健康管理など環境省の新たな取り組みが述べられた。その他、震災後の気候変動、エネルギー政策の見直しなどについての講演があった。
(感想)
 メディアからは得られない実態を説明いただいたとの来場者の感想があった。

講演中の谷津龍太郎氏



○2010年11月 講演者   北野 大氏

淑徳大学教授(講演時は明治大学教授)
都立大学大学院工学研究科博士課程修了 工学博士
専門 環境化学(地球規模の環境問題など) 分析化学
(財)化学品検査協会(現 化学物質評価研究機構)、淑徳短大教授、
明治大学理工学部・同大学院理工学研究科教授を経て現職)
経済産業省化学物質審議会委員等を勤める。
日本分析化学会技術功績賞、環境科学学会賞、環境保全功労賞受賞
(講演内容)
「地球温暖化と新しいライフスタイル」
 温暖化は世界的規模での対処でなければならないと強調され、地球が置かれている温室効果ガスの影響では、CO2が目立っているが、メタン、フロン、亜酸化窒素など多くの化学物質が関係している。
 最近の異常気象の多発=台風、熱波、豪雨、海面上昇などは、たった1℃弱の温度変化と考えがちであるが、過去100年で0.74℃上昇と比較すると決して小さい気温変化ではない。日本への影響予測では、今世紀末までに2-3℃気温上昇による異常気象が続くともいわれている。
 今後のライフスタイルを考えると、ものの豊かさを示す指標は、GNPとGDPであるが、ほんとの心の豊かさとは=四苦八苦のないこと?感動と感謝が基本あるという考え方を示された。
 講演では、たくさんの命題や例題とデータを示され、画面を見ながら丁寧な説明をされた。
(感想)
 どの来場者からも「わかりやすく難しい内容も身近に感じ講演でした」との意見があった。

講演中の北野 大氏



工場見学

年間2~3回、開催されている。

これまでの主な見学先
〇千葉大学植物工場(2015年10月20日)
〇横浜市金沢水再生センター、南部汚泥資源センター(2015年6月8日)
〇東京リサイクルパワー(株)(2014年10月23日)
〇有明工業(株)(2014年7月7日)
〇JT(日本たばこ産業)北関東工場(2014年1月23日)
〇合同資源(株)(2013年10月20日)

千葉大学植物工場(2015年10月20日)

  • ドーム内の人工光によるレタス栽培

  • 研修棟Bの前で参加者のスナップ写真

  • きゅうりを繊維状の培地で育てている

  • 3号棟夏期に温室内温度を下げるファン

横浜市金沢水再生センター、南部汚泥資源センター(2015年6月8日)

  • 見学前の講義

  • 沈澱池越しに見える南部汚泥資源化センターの煙突(水圧調整用のタワーとこと)

  • 卵形消化タンク上部が回廊で結ばれている

  • 遠心濃縮機